毎日元気モリモリお日記

サブカル女子だいすき!!

美少女変身願望紀行

 

  なんだか蒸し暑いような、ただ油断すると冷え込んでしまうような夜のことだったか。スーツ姿の男がいきなり枕元にやって来て「お前の願いを一つだけ叶えてやろう。」と囁いてきたのは。男は自分を神だと名乗ったが、「んなトンチキなインチキがあるか。」と寝惚けているクセに僕の頭はやたらと冴えていて懐疑的だった。見知らぬ男が枕元に立っているなんて、どうせいつもの妙にリアリティを帯びたタチの悪い夢だ。そもそもコイツが本当に神様だったとしても、願いを叶える人間に僕を選ぶ理由がない。ちょいと都合が良すぎる、だからその怪奇現象は夢だと容易に判断ができた。

 

  と、わかっていたはずなのに、おかしなことに僕はもう既に願いごとを口走っていた。今思い返すと、あれは反射と呼ぶには少し論理めいていたような気がしないでもない。

 

  男は「承知した。」とニヤリと笑うと靄みたいになって消えてしまった。途端に、こんな嘘みたいな状況でも何とか縋ろうとしている自分が情けなくなって、再び布団に深く潜った。

 

  翌朝、そんな胡散臭い夢の内容などはどこへやらで、僕はいつも通り目を覚ました。昨日のヘンテコな夢のせいで寝付きが悪くなったのか、その日はやけに体が重かった。母親の呼ぶ声にふらつく足取りで寝室のある2階から1階に降り、顔を洗うために洗面台の鏡の前に立った僕は愕然とした。

 

  そこには肩まで伸びた艶やかでしなやかな黒髪、パチリと開いた二重、通った鼻筋、そして引き締まったスタイル。

 

  そう、僕の姿は美少女に変わっていたのだ。

 

 その瞬間世界は逆行を始め、やがて再構築を始めた。僕の生きてきた十余年間は美少女の生きてきた歴史に差し替えられ、最後には僕の記憶すら書き換わった。

 

 

 

  最近ボーッとすることが多い。今だって洗面台の前でしばらく立ち尽くしていてた。どこか悪いのかと聞けば頭が悪いと両親は舌を出して私はその度にムッとする。長い髪を櫛で整える感覚にはなぜか慣れない感じがあって今日は手間取った。毎日しているはずなのにどうしてだろうか。

 

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  コンプレックスの塊である僕はそんな妄想をすることがある。というと若干嘘なニュアンスになるな。ほぼ毎日している。

 

(変身願望が神様によっていとも簡単に叶えられるあたりは、昔から努力を嫌う僕らしくて滑稽ではあるが)。

 

  何を今更という感じだが、美少女は本当に素晴らしい。髪を掻き分ける何気ない仕草も、電車に遅れそうになって駅の構内で少しだけ小走りになるのも、食べかけのチャーハンですら全部尊いってもう魔法じゃんかそんなの。

 

  そりゃ僕だって、君だって、誰だって美少女になりたいよな。男だってなりたくたって当たり前だ。

 

 

 

  ただ断っておきたいのは、美少女になって男どもにチヤホヤされたいとかそういう気持ちは毛頭ないということだ。寧ろ獣臭い男衆お呼びでない。

 

  美少女になった僕をそうだな、仮にN子としようか。これは本当に性差別とかではなくて、こんなことを言ったら各所から怒られるのは重々承知なのだが、それでも表明しなければならない。

 

  N子はレズである。

 

  多様な性意識に最大限の敬意を払わなくてはいけない時代に、こんなことを言っては絶対にダメだ。同じくらいに、N子はレズじゃなきゃダメなんだ。それくらいわかるだろ。これこそ僕の深層心理で世の真相真理なんだ。

 

  僕は、いや私は、隣の席になった小柄な小動物のような大人しい女の子に恋をするのだろう。そして二人はどんどんと仲良くなり、唯一無二の親友となる。

 

  ただ、その子には彼氏がいた。恋心を秘めながらもそれをそっと隠し続け、ときには彼女の恋の話にもやきもきしながら付き合った。

 

  何気ない平穏な日々を終わらせる事件は、修学旅行に起こる。

 

  親友同士の二人はもちろん同じ部屋に宿泊するだろう。しかしその最終夜、旅行先で日課であるオナニーを思うように出来ずサカッていた私はあろうことか親友に手を出してしまう。最悪である、N子はNTR子になってしまうのだ。

 

   ここから濃厚なレズセックス描写を挟む予定だったのだが、マジでガチのやつになってしまうからやめた。それに文字にしたら何か大切なものが崩れ落ちてしまう気がしたからやめた。

 

 

 

 やたら散文的な随想になったが、僕はとにかく美少女になりたい。そういえば今夜は夏色の絵の具と冬色の絵の具を無理やり混ぜたみたいな、なんだか蒸し暑いような、ただ油断すると冷え込んでしまうような、そんな夜だ。