毎日元気モリモリお日記

サブカル女子だいすき!!

サブカル女子漂流奇譚

  僕は本屋が好きだ。勿論読書も好きなのだが、それ以上に本屋という空間そのものが居心地が良くて好きだ。読んだこともない本の表紙に想いを馳せるのも好きだ。ほのかに漂う本の匂いが好きだ。そして何より、本屋にいるサブカル女子が好きだ。

……もう一度言おう。本屋にいるサブカル女子が好きだ。漫画が好きでアニメが好きでゲームが好きで邦ロックが好きでボカロが好きで顔が可愛くて、だけど絶対にSNSに自撮りは上げないタイプのサブカル女子が好きなのだ。この話を友達にしたら、「そんなお前に都合の良い、ギャルゲーの3人のヒロインの内ちょっと地味な感じの、だけど根強いファンが一定数いる女はこの世には存在しない」と哀しい現実を突き付けれた。

 多分大体の人は察したかもしれない。最初に書いたいくつかの本屋が好きな理由はブラフとまでは言わないが、本命ではない。そう、僕はサブカル女子と出逢うために本屋をハシゴする新種の変態なのだ。

 しかし、君は知っているか。本屋にサブカル女子は居ないということを。正直僕はサブカル女子を舐めていた(足の裏を、とかそういう物理的な話ではないです)。「ほらほら、サブカル女子の皆さ〜ん、皆さんの大好きな新刊ですよ〜(笑)」とか言って釣竿にラノベを括り付けて垂らしていても魚は一向に喰らいつく気配はなかった。サブカル女子×本屋という安直な発想ではサブカルの境地に辿り着くことは不可能だったのだ。

 中にはあまり本屋に行かない人もいるだろうからそんな人の今後の為に教えておくと、本屋に居るのは男ばっかりだ。俯きながら歩くメガネで猫背のオタクたちが蔓延るディストピア、それが本屋だ。都内の方に行けばもうちょっと違う結果を得られるのだろうが、何せ僕が住んでいるのは千葉県の片田舎。そんな田舎の本屋は僕によく似た地味メガネで溢れていて見るに耐えない。もしかしたら彼らもサブカル女子を探してここに辿り着いた同志かもしれないが。

  しかし、運命の瞬間というのは唐突にやってくる。いつものように本屋の中を所在なく彷徨っているときだった。見つけてしまったのだ。幻のサブカル女子を。

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 ショートボブにメガネ、だるだるの服を着て肩掛けカバンに缶バッジを着けた、100点満点のサブカル女子を。本当にその格好がサブカルの教科書通りすぎて強いデジャヴを感じるほどだった。僕がもし小学生だったら「せんせー!ここチャレンジでやったー!」って叫んでたことだろう。

 僕は嬉々とした。本当にサブカル女子ってこの世に居たんだ……。そのときの感情は趣味嗜好の範疇に収まる感動を通り越し、UMAを見つけた人にだけ訪れるであろう正体不明の感動と化していた。やっと見つけたぞ!これで、やっと……

 

 

……ん?

 

……見つけたから一体何なんだ?

 

別に喋りかける訳でもない。触れる訳でもない。そもそも僕はキモいコミュ障だから女の人に近づくことすら出来ない。

 

……じゃあ、俺は一体今まで何をしていたんだ?

 

 視界がグニャリと歪み、僕はその場に倒れ込んだ。

 

……目が覚めるとそこは無機質な白い部屋だった。体を起こし、奥の方に向かうと人が数人立っていた。全員の話を聞き整理した結果、僕を含め8人の男女がこの窓もドアもない部屋に閉じ込められているようだった。そして全員ここに連れ去られてきた際の記憶は無いそうだ。

 「一体これから何が始まるんだ……。」

僕がそう呟いた次の瞬間、部屋のテレビに狂気に満ちたピエロの顔が映し出された。

  『やぁ、諸君。君たちにはこれからゲームをしてもらう。』

 「ゲームだと?」

最年長のフジオカさんが尋ねた。

 『そう。ゲーム。それも、命を賭けた、ね。』

全員の間に緊張が走った。

 「ふざけんじゃねぇぞッ!!」

土木関係の仕事をしているというマツモトさんがテレビを思い切り殴った。バリン、という音がして、テレビのモニターは砕け散った。

 「へっ、こんなもんよ」

マツモトさんが自慢げなポーズを取った次の瞬間だった。

 『逆らう者には、罰を。』

突如、マツモトさんに装着されていた首輪が爆発した。そして、マツモトさんは……。

 「キャァァァァァッッッ!!!」

 「なんてこった……」

 「皆さん、落ち着いて!!」

部屋が一瞬にして生々しい血の匂いとパニックの様相に包まれた。

 「私、恐いよ……。」

そして、 ショートボブにメガネ、だるだるの服を着てカバンに缶バッジを着けた、漫画が好きでアニメが好きでゲームが好きで邦ロックが好きでボカロが好きで顔が可愛くて、だけど絶対にSNSに自撮りは上げないタイプの、趣味を聞かれたら人間観察って答えて、ギターを買ってはみたけどFコードで挫折して、ヴィレッジヴァンガードに入り浸ってる、そんなサブカル女子のヤマナカさんが僕に抱きついてきた。君だけは絶対に守る、と心の中で誓い僕は強く抱き返した。

 

to be continued……

 

 

 

ザ・蛇足