毎日元気モリモリお日記

サブカル女子だいすき!!

エッセイ「こんな時に言うべきことではないかもしれないけど、童貞卒業見込み取り消しになった奴らにR.I.P.」

f:id:USB0286:20200510123226j:image

 

・「砂上の楼閣」

 

 それは結局、砂漠に照りつける日差しが見せた蜃気楼だったのだ。遠のいた。もう少しで手が届くと思っていたのに、遠のいた。この消化不良だった日々が終わると思っていた。この満足に見えてどこか鬱屈とした日々が。家で自堕落な日々を過ごしている間に1つ、2つ、また遠のいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

SEXが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大学でのウキウキキャンパスライフが立ち消えになり、早いもので1ヶ月が過ぎようとしている。やってみると案外オンラインで出来ることも多く、なんならこのクソみたいに味気ない生活が板についてきた頃合いである。ITってほんとすげーのな。あれも出来るこれも出来る。面倒な奴と対面しなくて済むし、もしかしてオンラインって最高なん!?!?これが所謂「オンライン寄生」ってやつ!?!?ガッハッハ……ハッ……ハ………

 

 

 

 

 

 

 

 

(妖精)

おい、目を覚ませ!このクソ童貞!!

確かにオンラインはすげぇよ!!

(そしてそのシステムを支えている理系は凄いし、そのシステムを利用するだけして結局飯食って糞垂れてるだけの俺たち文系って何なのか時たますげー不安にならない??)

オンライン飲み会やオンライン授業、オンライン対戦色々出来るかもしれない!

 

 

 

でもな!天地がひっくり返ったとしても、オンラインSEXだけは出来ないんだよッ!!!!!

 

 

なんだって!?!?!?!?

 

 

 

…華麗で滑らかな導入が終わってここからが本題である。

 まずもって童貞という生き物は、SEXをする為に大学に進学すると言っても過言ではない。SEXをする為に必死こいて勉強机に向かってきたと言っても過言ではない。このフェイク御法度の時代に敢えて断言しよう。仮にそれが過言だったとしても、「大学に進学すればSEXが出来る」と思ってる童貞が大半なのは間違いない。童貞なら誰しもが自身の心の中に童貞卒業見込みを抱いている。

 

 そんな童貞たちが夢にまで見たSEXが、コロナ禍の影響で今後ほとんどなくなるのではないかと僕は推測している。しかもそれは自粛要請が解除されれば解決する問題ではないような予感がしている。あまつさえ、早期に事態が収束したとしても、向こう2〜3年は童貞がSEXにありつくのは厳しいと睨んでいる。なぜなら、件のウイルスが収束しようがしまいが、この騒動の先に「他人との距離をこれでもかと言うほど取りまくる社会」の形成が待っているからだ。

 

 

そんな社会で誰が童貞とSEXするの…??

 

 そもそも童貞は不潔の象徴みたいなもんである。衛生観念が急速に高まっているこの世の中で、女性が新たなパートナーとの性的交渉を望むだろうか?また、社会的接触を避ける過程で自ずとSEXの回数は減る。それによってSEX1回当たりの希少価値は高まる。そうなると、その貴重な1回を誰がわざわざ童貞に費やすだろうか?不潔で、SEXが下手で性欲の強さだけが取り柄の童貞に費やすだろうか?

 

 まとめると、僕は衛生観念の高まりとSEXの希少価値が上昇することで「SEXの占有化」が起こるのではないかと危惧している。

 

つまり、SEXが現段階で童貞を卒業しているエリートヤリチン達のためだけの物になってしまう可能性が高いということである。

 

 

…こうなってくると、本当に残念だが、大学生活中に僕たちの童貞は消えないということは容易に想像できる。その不名誉な称号は守護霊のように背中にぴったりとくっついて、しばらく僕らから離れることはないらしい。

 

だから僕は、この場を借りて本来なら存在したはずだったSEXの葬式を開こうと思う。

 

『すべての童貞へ。

 

あともう少しでSEXにこぎつけられた童貞へ。

 

憧れの先輩と映画に行く予定だった童貞へ。

 

財布にコンドームを仕込ませていた童貞へ。

 

彼女のブラジャーに手をかけたその瞬間に、緊急事態宣言が発令した童貞へ。

 

ただ家の中で漠然とシコっていた童貞へ。

 

何もかも、おじゃんになってしまいましたね。

 

別に手続きした覚えもないのに勝手に童貞学園に入学させられて、卒業出来ないと嘲笑われる。本当に不条理ですよね。

 

そんな僕たちが、いや俺たちが、明日から前向きに生きていく為に。そのすべてのSEXの可能性は潰えたものとして、ここで清算します。

 

 

 

 

南無三!!!

 

童貞卒業見込み、取り消しッ!!』

 

 

 

 

 

 

…もしかしたら怒る人がいるかもしれない。ものすごく、怒る人がいるかもしれない。

 今最前線に立っている医療従事者の方々の苦しみ。コロナウイルスで家族を失った方々の悲しみ。職を失い途方に暮れる方々の絶望。それを思って「童貞卒業の機会を失った程度で」と怒る人が居るかもしれないし、居て当然だ。

 しかし、感情というのは相対的に存在するものではない。自己の爪先から全身を貫く、絶対的な存在だ。感情はどこまで行っても自分にしか理解できない。他人の感情を想像することはとても大切だけれど、それは結局想像の範疇を出ない。それなのに誰かの感情を勝手に代弁して、優劣をつけて、社会的な正しさをまた他の誰かの感情に問う。そんなのはあまりにも不毛過ぎるんじゃないかと。僕はそう思う。 

(勝手に全国の童貞はみんなSEXをしたがってると代弁したが、あれは事実なので問題はない。何事にも例外はある。僕はそう思う。)

 

 とにかく、ここに墓を建てよう。SEXの墓を。コロナウイルスのせいでなくなった、全国の童貞たちの初SEXの瞬間の墓を。はたから見ればその些細で何でもない、けれど当人たちにとってはとてつもなく大きくて残酷な悲しみの爪痕を。その墓に花を手向けてしまうようなどうしようもない人間が世界に1人は居たって良い。

 

 

 

 

 

 今この文章をつづる僕の心は今、少しも笑ってなんかいない。むしろ泣いている。苦し紛れに骨肉のユーモアをいくつか交えてはいるが、少しもウケを狙ってなんかいない。ただ身を貫く果てしない怒りと悲しみに身を任せてこの文章を書いている。この文章は純度でいえば120%、精子よりもずっと濃い「俺」そのものに違いない。脳みそを全く使わないでぶつけた言葉の羅列にも関わらず、その言葉はどんな頭を捻ったときの僕よりも「俺」なのであった。

 

 本当に自分にできることは何か。考えに考えた末の結論がこの散文である。現在時刻深夜4時23分。思いの丈を、ただひたすらにぶちまけること。こんな有事に自分の中に芽生えてしまった、全国の童貞への同情というマジでクソみたいな感情をぶちまけること。

 

 

つまり、このエッセイは誰かの代弁などではなく、紛れもなく「俺」の「大便」なのである。

 

 

 

 

 

 

 こんな糞を、ここまで読んでくれた物好きへ。ありがとう。ただひたすらに、ありがとうと伝えたい。俺は錯乱した状態でこの文章を書いたから、読むの大変だったろうに。それなのに、読んでくれて、ありがとう。

 

 それじゃあね。ブリブリブリッ